今回はガジェット界隈で大きな話題となっている、ハイエンドスマホ「REDMAGIC 11 Pro」の性能水増し疑惑について、検証系変態YouTuber「さいちょう」さんの鋭い検証動画をベースに解説していく。13万円もする高級スマホで一体何が起きているのか。今回はスマホ選びの常識を覆す「ベンチマークブースティング問題」について迫っていこうと思う。
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ベンチマークブースティング問題とは

まず、そもそも「ベンチマークブースティング問題」っ一体何なのかっていうハナシなんだけど、簡単に言えば「スマホの性能水増し問題」になる。スマホを購入する際の目安となるベンチマークは「AnTuTu Benchmark」、「3DMark」、「Geekbench」、「PCMark」なんかのアプリで測ることができる。
代表的なベンチマークソフト
- AnTuTu Benchmark(総合性能)
⇒CPU、GPU、メモリ、UX(操作感)を丸ごと測定。最も有名な指標。 - Geekbench 6(CPU性能)
⇒処理能力(計算速度)に特化。実用的なタスクに近い測定を行う。 - 3DMark(GPU性能)
⇒ゲーム性能(グラフィック処理)に特化。負荷の高い映像を流して測定。 - PCMark(実用性能)
⇒写真編集やブラウジングなど、日常的な作業の快適さを測定。
これらのアプリで測定した結果を目安に、購入するスマホが「どれくらいの能力があるか」を予測することができる。例えば、自動車で言えばカタログに載っている「燃費」を元に、その車が1回の給油でどれくらい走れるのかを測るような感じだ。

ベンチマークブースティング問題は、つまりこの自動車でいう「燃費」の数字を良く見せて、消費者に優良誤認をさせている問題なんだ。
ベンチマークブースティング問題とは
- スコアを実力以上に高く見せる不正行為
⇒ベンチマークアプリ実行時に、端末の性能制限(サーマルスロットリングなど)を一時的に解除し、限界以上の性能を引き出す行為。 - 主な問題点
⇒端末の性能が高いと消費者に誤認させ、売上を増やすためのマーケティング手法として利用されることがある。
性能水増し疑惑のきっかけ
そもそも、なんでこのタイミングでベンチマークブースティング問題が浮上したのか。事の発端は、半端ない検証で有名なガジェットユーチューバー「さいちょう氏」の次の動画が関係している。
さいちょう氏がハイエンドスマホ「REDMAGIC 11 Pro」の性能テスト(ベンチマーク)を行っていた時に不可解な挙動に気が付いてしまった。このスマホには、パソコンのような「水冷ユニット」が搭載されているが、水冷ユニットの起動をオフにしているにもかかわらず、ベンチマークアプリを起動した瞬間に、なぜか水冷ユニットがフル回転を始めた。

ここから、「特定のアプリ(ベンチマーク)を起動した時だけ、OS側が無理やり性能を引き出しているのではないか?」という、簡単に言えば「ドーピング疑惑」が浮上したんだ。
ステルス版アプリで暴かれた「2.2倍」の性能差

詳細は動画本編を確認してもらいたいんだけど、さいちょう氏はその事実関係を確認するために、ベンチマークソフト「3DMark」の開発元に協力を依頼し、特別なソフト(ステルス版アプリ)で検証を行った。
ステルス版アプリとは
- 通常版アプリ
⇒スマホのOSが「ベンチマークアプリを起動した」と認識して、限界以上の性能を引き出す場合がある。 - ステルス版アプリ
⇒起動を認識させない特別版のアプリ。
結果として、この両者を比較すると、なんと1.3倍〜2.2倍もの性能差があったのことが判明。 つまり、数値上のスコアを良く見せるためだけに、日常的には使えない「過剰なドーピング」が行われていた可能性が極めて高いという検証結果になった。
ベンチマークブースティングの何が問題なのか

「スコアが高いならいいじゃん」と思うかもしれないが、これには3つの大きなリスクがある。
- スペック詐欺(優良誤認)
⇒スコアを信じて買ったのに、実際のゲームでは期待通りの動きをしない。 - バッテリーの劣化
⇒無理な負荷をかけることで、バッテリーの寿命を縮める。 - 熱暴走のリスク
⇒ 限界を超えた動作により、素手で持てないほどの高温になり、故障の原因になる。
それぞれ解説していこう。
スペック詐欺(優良誤認)

一番大きな問題が、スペックの優良誤認だ。本来期待される以上のベンチマークを参考に商品を買ってしまったが故に、実際はスペックどおりの動作をせず目的のゲームを快適に楽しむことができないといったことが起こりえる。メーカーの利益のために、消費者が不当にスペックの低い機体をつかまされているのが一番の問題点だ。
バッテリーの劣化

そして第二の問題はバッテリー劣化の加速だ。これはベンチマークソフトを使った場合に限った話ではあるんだけど、一時的にでも限界を超えて機体に過度な負荷をかけた結果、バッテリーが損傷する。結果としてスマホのバッテリー劣化が加速をしてしまうんだ。
パソコンなんかでは意図的に限界以上の性能を引き出して楽しむ使い方なんかもあるんだけど、スマホはバッテリー内蔵だからその影響が大きいんだ。
熱暴走のリスク

そして3つ目が熱暴走のリスク。これも限界を超えて性能を引き出してしまったが故に放熱が追い付かず、手に持つことができないくらい機体が熱くなるリスクがある。
これもベンチマーク起動時の話ではあるんだけど、逆に言うとやっぱりゲームをしている時なんか手にもってプレイすることができない。つまり、「限界を突破した性能は発揮できない」ということになる。そんなスマホのベンチマーク結果に一体何の価値があるだろうか。(いやない。)
実は今に始まったことではないらしい

実はこの「ベンチマーク・ブースティング」と呼ばれる問題は、10年以上前から指摘されているらしい。しかし、俺達のような消費者は勿論こんなこと知らないし、俺も初めてしった。
スマホを選ぶ際にユーザーが「ベンチマークスコア」を指標にする。結果としてメーカー側としては「正直に性能を出しても売れないが、数値を盛れば売れる」という歪んだインセンティブが働いてしまうんだ。こんなことが10年以上も続いていて、未だに改善をされていないことこそが一番の問題だろう。
性能水増し不正はスマホ業界に限った話ではない

ちなみに今回やり玉に挙げられている「REDMAGIC 11 Pro」は中国メーカーのスマホだが、性能水増し不正問題は何もスマホ業界に限った話ではない。日本を代表する自動車メーカーにいても、簡単に調べただけで次の通り不正問題が出てくる。
自動車メーカーの不正問題
| 時期 | 不正の内容 | 該当メーカー |
| 2016年 | 燃費試験データ改ざん | 三菱自動車 |
| 2016年〜2017年 | 完成検査不正 | スズキ、日産、スバル |
| 2018年〜2022年 | 燃費、排出ガス検査不正 | スバル、日産、スズキ、マツダ、ヤマハ、日野自動車 |
| 2024年 | 認証試験データ改ざん | トヨタ、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ |
つまり、今回指摘されている性能水増し不正問題は結構身近で頻繁に起こっている問題なんだ。こうなってくると、一体何が正しくて何が間違っているのかを見極めるのは非常に難しいということがよくわかるだろう。
どうやってスマホを選べばいいのか

じゃあ俺達はいったい何の情報を信じ、どうやってスマホを買えばいいのか。ポイントは次の3つ。
- ベンチマークはあくまで目安
⇒スコアの数字だけを盲信しない。 - SoCを基準にする
⇒スマホに搭載されている物理的なチップ(Snapdragonなど)の種類を確認する。チップ自体を偽装するのは難しい。 - 情報を広く浅く集める
⇒一人のYouTuberや一つのメディアだけでなく、複数のソースから使用感やデメリットを収集する。
それぞれ詳しく解説をする。
ベンチマークはあくまで目安

繰り返しになるが、ベンチマークはあくまでスマホの性能を測る上での目安ということを肝に銘じておいてほしい。
今回の一件はあくまで氷山の一角かもしれないし、そうじゃないかもしれない。しかし、現状ではあまりベンチマークソフトの数字は信用できなくなっているのもまた事実だ。
SoCを基準にする

一方で、そのスマホの性能を決めているのは勿論ベンチマークではなく、スマホに積まれている「SoC」。つまりスマホにおける頭脳だ。これを基準に選ぶのが良いだろう。
なぜなら、ベンチマークアプリと違ってSoCは物理的にスマホの中にあるものだから、それを改ざんしてしまうと直ぐにバレてしまうし、動かぬ証拠として残ってしまう。企業としては不正に対する言い訳をすることができなくなってしまうんだ。
情報を広く浅く集める

3つ目として、今回の件に限った話ではないんだけど、情報は広く浅く集めてほしい。
ほとんどのユーチューバーは情報の信頼性について担保なんかとっていないし、メディアが出すニュースも結局は企業が出したプレスリリースに基づいたものだから、何が本当で何が本当じゃないのかっていうのは非常にわかりづらい。

だからこそ、1つの情報源に頼るのではなく、複数の情報源を広く浅く集めて、ベンチマークだけではなくてどんなSoCが積まれているかや、使用感、どんなデメリットがあるのかななど、色々なレビューを集めて判断することが大事なんだ。
ベンチマークソフトの開発元も結構悪い

ベンチマークブースティング問題の諸悪の根源は勿論スマホメーカーなのだが、10年以上その状態を見過ごしている、または手をこまねいているベンチマークソフトの開発元にも大きな問題がある。

今回の件も3DMarkの開発元であるUL Solutionsの協力によって調査が行われたが、本来であればこういった開発元が率先してスマホのベンチマークを計測し、定期的に結果を公表していく必要があるだろう。
そうしないと、そもそもベンチマークソフトの信頼性に関わってきてしまうので、各開発元が対応を行い、スマホ業界が清浄化されるように期待したいところだ。
まとめ

今回は半端ない検証で有名な変態ガジェットユーチューバー「さいちょう」氏が投稿し、物議を醸した動画から、ベンチマークブースティングの問題について考えてきた。個人的にはベンチマークはあくまで参考値。性能がわかりづらいスマホがどれくらいの序列なのかをざっくりと把握するための道具でしかないと思う。

とはいえ、仮に今回のような性能の水増しがスマホ業界にまかり通っているのであれば、勿論それは大きな問題だし、そういった歪みは、スマホ業界の発展にマイナスになることは間違いないだろう。各ベンチマークソフト開発元には今後、率先して自ら検証を行い結果を公表していくような流れができるのを期待したい。
また、消費者である我々消費者も、カタログスペックという「数字の魔法」に惑わされず、様々な媒体から情報を広く薄く集めるように気を付けたいところだ。
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