パソコンやスマートフォンに搭載されている最高に便利な端子。それが「USBタイプC」だ。
身近にありすぎてあんまり気が付かないんだけど、「USBタイプC」の規格は様々で、バージョンによって性能に大きな違いがある。
特に「USB3.2」という規格は、その中でも更に4つに細分化されていて、転送速度がバラバラだったりするから非常にわかりづらい。
だから、この記事では「USBタイプC」の各規格ごと性能について、わかりやすくまとめてみたから、最後まで見ていってくれると嬉しい。
USBタイプCとは
USBは、ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus)という規格の略称だ。
タイプC 以外にも、USBメモリでおなじみのタイプA、絶滅寸前のタイプB がある。
タイプC の凄いところは、そのケーブルだけでデータ転送だけでなく、充電や映像の通信も可能になったことだ。
USBタイプCとは
- 高速なデータ転送が可能
- 急速充電が可能
- 映像や音声の通信が可能
- ケーブル1本で同時にこなせる万能端子
USBタイプCの種類
その便利すぎるUSBタイプC にも弱点が1つある。
それは、バージョンアップを繰り返してきたことで、「USBタイプC」の中でも、規格によって性能がバラバラになってしまったことだ。
下図は、そんな規格ごとに「転送速度」と「給電性能」、「映像出力」についてまとめた表だ。
ひとくちに USBタイプC といっても、現在はこれだけの種類がある。あまりにもわかりづらい。
USB2.0と3.0で通信速度が格段に上がったことを知っている人は多いと思うんだけど、以降もバージョンアップを繰り返した結果、現在では USB 4が最高規格で、転送速度が120Gbps、充電は240W、映像出力は8Kの高画質まで対応している。
また、給電性能については USB PD(USB Power Delivery)に対応しているかで大きく異なる。対応していないものは最大でも7.5Wだ。この点は後述する。
その中でもちょっと異色なのが⚡マークが独特な「Thunderbolt」になる。
細かい説明は後述するけど、「USB4」と「Thunderbolt」は異母兄弟みたいな感じで、生みの親は違うんだけど、とっても似ている存在って感じ。
USBタイプCの種類
- USBタイプCは種類がたくさん
- 転送速度は120Gbpsが最大
- 映像出力は8Kまで対応
- 給電は240Wまで対応
- 急速充電はUSB PDに対応したものだけ
このままだと非常にわかりづらいから、最も重要な転送速度に注目をして並び変えたのが下の表になる。
転送速度 | 規格 | 最大給電 | 映像出力 |
---|---|---|---|
480Mbps | USB2.0 | 7.5W 100W(USB-PD3.0) 240W(USB-PD3.1) | × |
5Gbps | USB3.0 | ||
USB3.1Gen1 USB3.2Gen1 | 〇 | ||
10Gbps | USB3.1Gen2 USB3.2Gen1*2 USB3.2Gen2 | ||
20Gbps | USB3.2Gen2*2 USB4Gen2 | ||
40Gbps | USB4Gen3 | ||
Thunderbolt4 | 140W | ||
120Gbps | USB4ver2 | 240W | |
Thunderbolt5 |
転送速度に注目すると、USB3.0の登場以降、性能が同じで名前だけ違う規格が混在しているのがわかると思う。
例えば、10Gbpsでは、「USB3.1Gen2」「USB3.2Gen1*2」「USB3.2Gen2」の3つの規格が混在しているんだけど、これらはほぼ同一規格と思ってもらって差し支えない。
特に「USB3.2Gen1」がくせ者で、転送速度が5Gbpsしか出ないクセに、何だか高スペックそうな名前をしているから非常に紛らわしい。
単に「USB3.2」とだけ表示してある製品は、「USB3.2Gen1」の可能性が高いから要注意だ。
最新規格のUSB4についても、バージョンによって転送速度が異なる場合があるから、購入する際は製品仕様をよく確認することが必要だ。
その点、「Thunderbolt4」端子の基準は一定して高い水準なので、最高水準のUSBケーブルを求める場合は「Thunderbolt4」に対応しているものを買っておけば間違いない。
「USB4ver2」と「Thunderbolt5」は現行製品で最高のスペックを誇っているが、ノートパソコンやスマートフォンといったデバイス側の性能が追いついていないので、現状ではオーバースペックになる。
USBタイプCの選び方
- 性能が同じで名前は違うだけの規格がある
- 「USB3.2Gen1」は性能が低い
- 「USB3.2」とだけ表示してある製品に注意
- 「USB4」の中でも転送速度が異なる
- 「Thunderbolt4」を買っておけば間違いない
給電(USB Power Delivery)とは
USB PD(USB Power Delivery)とは、最大240Wまでの出力に対応する、USB Type-C端子に対応した電源供給の規格のことだ。
従来のUSB 3.0では4.5Wまでの出力でしか給電をすることができなかったが、USB PD3.0 の登場により、100Wまでの電源供給が可能になり、そして、2021年5月には最大240Wに対応した新規格「USB PD 3.1」が登場した。
USB PDの登場によって、スマートフォンやノートパソコンなどに高出力の給電を行うことが可能になり、USB Type-C端子の利便性を大幅に向上させることになった。
注意点としては、USB PD に対応しているUSBであれば最低100Wの給電ができるわけではないことだ。あくまでその規格としての最大スペックを表示しているに過ぎない。
Type-Cのケーブルを購入する際には、製品仕様を見て、何Wの給電に対応しているのかをしっかりと確認しよう。
例えば Amazon の安いType-Cケーブル を見てほしいんだけど、これはデータ転送速度が 5Gbpsって書かれているけど、USB PDに対応とはどこにも書かれていない。
だから、恐らくはUSB3.0規格のケーブルだから、4.5Wの低速充電しかできないなんだけど、「高速充電」とか書かれているあたり、果てしなく黒に近いグレーな製品だ。こういう製品に手を出してはいけない。
ただ、最新のiPone15や16も、スマホ側が対応している急速充電が最大30Wだから、スマホの充電だけだったら100W対応のケーブルや充電器は必要ない。
60W対応ケーブル
※Anker PowerLine III USB-C & USB-C は、60Wの急速充電には対応していて安いけど、中身はUSB2.0の規格だから、データ通信速度は480 Mbpsと低速、そして映像出力に対応していない点に注意。
純粋に高速充電の用途だけならOK。
30W対応充電器
USB Power Deliveryとは
- USB PDに対応しない場合は最大7.5W
- USB PD3.0は最大100W
- USB PD3.1は最大240W
- USB PD3.1は USB PD EPRとも呼ばれる
- 規格としての最大値であり、製品ごとに出力は違う
- 急速充電に対応しているけど、中身はUSB2.0ということもある
なお、USB Type-Cで高出力での給電を行う場合は、ケーブル以外にも、スマートフォンやノートパソコン本体、充電器の「USB Type-C 端子」が「USB PD」に対応している必要があるから、併せて注意をしてほしい。
映像出力(オルタネートモード)とは
USB Type-C が他のUSB規格と比べて最も優れているのが、映像出力を行うことができる点だ。
「USB 3.1」の規格より、映像出力に対応した「オルタネートモード」を搭載。
以降もデータ転送速度の向上により、USB4では8Kの映像を転送することが可能になっている。
ちなみに4K60Hzの映像出力なら、5Gbpsのデータ転送速度、つまり「USB 3.1」以降の規格であれば可能なようだ。
ただし、USB PD と同じで、「USB 3.1」以降の規格であれば、「全ての製品がオルタネートモードに対応しているわけではない」のがややこしいところだ。
結局は製品仕様を確認して、映像出力に対応しているかのチェックが必要になる。
映像出力対応&60W給電
データ転送、給電、映像出力が同時にできる
さて、ここまで USBタイプC の性能や規格ごとの違いについて紹介をしてきたんだけど、結局のところ、 USBタイプC の特徴は、「データ転送」、「給電」、「映像出力」を1本のケーブルでこなすことができる万能さなんだ。
ただ、繰り返しにはなるんだけど、 USBタイプC のケーブルだからといって、全ての製品がそれらに対応しているわけではない。
高速なデータ通信に対応をして、急速充電ができて、映像出力も可能なものになると、勿論値段が高くなるし、逆に急速充電の機能に割り切っているケーブルは価格が安かったりする。
そして、そんなわかりづらい USBタイプC ケーブルについて、一定の性能を保障しているのが「Thunderbolt4」なんだ。
Thunderbolt4 とは何か
「Thunderbolt4」は、厳密に言えばUSBタイプCケーブルではない。正確に言えば、USBタイプC の端子にも使える、intel 独自規格のケーブルで、⚡マークに 4 が振ってあれば「Thunderbolt4」の認証を受けている製品になる。
端子の形が違うけれども、iPhoneでいうライトニングケーブルみたいな独自のケーブルだとイメージしてもらえればいいだろう。
この「Thunderbolt4」のケーブルは何が凄いのかと言うと、「データ転送」、「給電」、「映像出力」が全て行えて、かつ、最低スペック制限が課されていることだ。
Thunderbolt4の最低スペック要件
- 転送速度40Gbps
- 映像出力8K
- 給電性能 15W
つまり、「Thunderbolt4」の名前を名乗るためには、最低でもこれだけのスペックを備えている必要がある。
「Thunderbolt4」のケーブルを一本持っていれば、大抵のことはできてしまうっていうのが、「Thunderbolt4」が最強のケーブルと言われる所以なんだ。
そして、この 「Thunderbolt4」の性能をフルで扱うためには、当然デバイス側のポートも「Thunderbolt4」の規格に対応をしている必要がある。
裏を返せば、ノートパソコン等のデバイスが「Thunderbolt4」に対応していれば、そのポートだけで「データ転送」、「映像出力」、「給電」を行うことが可能になるということだ。
特に、給電ハブ機能が付いたモニターとは相性抜群で、パソコンとモニターをケーブル1本つなぐことで、ノートパソコンに給電をしながら映像出力が可能になる。
俺が使っている27インチ4Kモニター「DELL S2722QC」も給電ハブ機能付きで便利。
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USB4 と Thunderbolt4 の違い
よくある質問として、「USB4」と「Thunderbolt4」の違いは一体何なのかっていうことなんだけど、規格としてはほとんど同じものだと言ってしまって大丈夫だ。
ただし、両者の最大スペック要件と最小スペック要件には若干の差がある。
基本的にはThunderbolt4 の方が USB4 より最小スペック要件が高い分、優秀という認識で間違いないだろう。
USB4と Thunderbolt4 の最大スペック
USB4 | Thunderbolt4 | |
---|---|---|
転送速度 | 40Gbps | 40Gbps |
映像出力 | 8K | 8K |
給電性能 | 240W | 140W |
USB4と Thunderbolt4 の最小スペック
USB4 | Thunderbolt4 | |
---|---|---|
転送速度 | 20Gbps | 40Gbps |
映像出力 | 4K | 8K |
給電性能 | 7.5W | 15W |
なお、 Thunderbolt4 の利点として、「デイジーチェーン(数珠繋ぎ)」に対応をしていることが挙げられる。
「デイジーチェーン」とは、例えばノートパソコンとモニター2枚をつなげる際に、ノートパソコンからケーブルを2本出すのではなく、「パソコン」-「モニター①」-「モニター②」とつないで出力が可能な技術のことだ。
「デイジーチェーン」に対応していることで、パソコン周りをよりすっきりさせることが可能になるが、その分、モニターのお値段がも高くなる傾向がある。
USB4ver2 と Thunderbolt5 の違い
そして、2025年現在で最新の規格なのが、「USB4ver2」 と 「Thunderbolt5」 になる。
基本的には、どちらも最大スペックが上昇した形で、特にデータ転送速度は120Gbpsと、今までの3倍の速度を叩き出すことが可能だ。
USB4ver2と Thunderbolt5 の最大スペック
USB4ver2 | Thunderbolt5 | |
---|---|---|
転送速度 | 120Gbps | 120Gbps |
映像出力 | 8K*2 | 8K*2 |
給電性能 | 240W | 240W |
ただし、2025年時点では、ここまでのスペックを搭載したデバイスの整備が進んでいないため、オーバースペックと言わざるを得ない。
一般ユースであれば、「Thunderbolt4」のケーブルさえ持っていれば大抵のことは用が足りてしまう。
Thunderbolt4(100W対応 )
まとめ
長々と書いてきたが、いかがだっただろうか。
USBタイプC ケーブル は、規格ごとにスペックが様々で、その全容をとらえるのは非常に難しいことではあるんだけど、簡単に言うと「USBタイプC」とは、「データ転送」「映像出力」「急速充電」が同時にこなせる万能端子だ。
USBタイプCとは
- 高速なデータ転送が可能
- 急速充電が可能(USB PD)
- 映像や音声の通信が可能(オルタネートモード)
- ケーブル1本で同時にこなせる万能端子
USB PDの登場によって、スマートフォンやノートパソコンなどに高出力の給電を行うことが可能になり、USB Type-C端子の利便性を大幅に向上させることになった。
ただし、USB PD に対応しているUSBであれば最低100Wの給電ができるわけではない。あくまでその規格としての最大スペックを表示しているに過ぎないので注意しよう。
USB Power Deliveryとは
- USB PDに対応しない場合は最大7.5W
- USB PD3.0は最大100W
- USB PD3.1は最大240W
- USB PD3.1は USB PD EPRとも呼ばれる
- 規格としての最大値であり、製品ごとに出力は違う
- 急速充電に対応しているけど、中身はUSB2.0ということもある
USB Type-C が他のUSB規格と比べて最も優れているのが、映像出力を行うことができる点だ。
ただし、USB PD と同じで、「USB 3.1」以降の規格であれば、「全ての製品がオルタネートモードに対応しているわけではない」のがややこしいところだ。
結局は製品仕様を確認して、映像出力に対応しているかのチェックが必要になる。
オルタネートモードとは
- 高速なデータ転送が可能
- 急速充電が可能(USB PD)
- 映像や音声の通信が可能
- ケーブル1本で同時にこなせる万能端子
このように、USBタイプC ケーブル は、データ転送も、映像出力も、充電もこなす万能ケーブルではあるんだけど、よくよく考えてみると、実際にそれが必要になるシチュエーションは結構少ない。
ぱっと思いつくのは、ノートパソコンとモニターをつなぐ時や、スマートフォンの映像をディスプレイに出力するぐらいだ。
逆に、出番が多いのはやはり「充電」としての用途だろう。
特に、スマートフォンは急速充電対応のモデルが浸透してきているので、出番が多いと思う。
多くの人にとって大事なのは急速充電に対応、つまりUSB PDに対応したケーブルなんだ。
だから、世の中に流通している タイプCケーブルの多くは、価格を抑えるために機能を充電に割り切って、データ転送が遅かったり、映像出力に対応していないものが多いんだ。
そして、大容量のデータ転送や、映像出力に対応をした「Thunderbolt4」対応のケーブルを1本持っておけば、充電以外の用途に対応ができるし、ケーブルの見た目も⚡マークがついているかどうかで判別が容易なので、管理がしやすいのもメリットだ。
結論(買うべきケーブル)
- 充電用ケーブル(USB PD対応)
- Thunderbolt4対応ケーブル
おすすめのケーブルと充電器
というわけで、様々なUSBタイプC の規格について紹介してきたが、我々に必要なケーブルは「充電用ケーブル(USB PD対応)」を複数と、「Thunderbolt4対応ケーブル」が1本あればいい。
繰り返しにはなるんだけど、製品ごとに映像出力に対応していなかったり、中身がUSB2.0で 転送速度が遅かったり、ややこしいから、給電性能別におすすめのタイプCケーブルと充電器を紹介する。
20W(iPhone12/13/14向け)
20Wの給電性能は、スタンダードなスマートフォンを使っている人におすすめだ。
iPhone12/13/14向けケーブル&充電器(映像出力なし)
20W対応充電器
30W(iPhone15/16向け)
30Wの給電性能は、iPhone15や16といった高性能なスマートフォンを使っている人におすすめだ。
もちろん、何ワットまでの急速充電に対応しているかはスマートフォンごとに違うから、製品仕様を確認してほしい。
iPhone15/16向けケーブル&充電器(映像出力なし)
60W(ノートパソコン向け)
60Wの給電性能は、一般的なノートパソコンを使っている人におすすめだ。
ノートパソコンの場合、映像出力も同時に行える「Thunderbolt4」ケーブルもおすすめだ。
60W対応ケーブル(映像出力なし)
60W対応充電器
Thunderbolt4(100W対応 )
100W(クリエイターノートPC向け)
100Wの給電性能は、ゲーミングやクリエイター向けのノートパソコンを使っている人におすすめだ。
この場合も、映像出力にも対応している「Thunderbolt4」のケーブルが使い勝手が良くていいだろう。
Thunderbolt4(100W対応 )
100W対応充電器&ケーブル(映像出力なし)