安定の価格の安さとわかりやすい料金体系で、3大キャリアの牙城に挑む楽天モバイルが、ついに新しい料金プランを発表した。
その名も「Rakuten最強U-NEXT」
名前を聞いただけで「あぁ、よくある抱き合わせプランね」って思った人も多いと思うが、お値段はそこそこ安いらしい。しかし、よくよく調べてみると既存の楽天ユーザーにも、U-NEXTユーザーにも全くメリットがない意味不明な内容になっていた。
今回はそんな楽天の新たなる1手について詳しく解説をしていきたい。
この記事のポイント
- 楽天の新プランの詳細
- 「Rakuten最強U-NEXT」はおすすめしない
- 「U-NEXT MOBILE」もおすすめしない
こっちもおすすめ
Rakuten最強U-NEXTとは

「Rakuten最強U-NEXT」は、名前のとおり、楽天モバイルが提供する回線料金プラン「楽天最強プラン」に動画配信サービス「U-NEXT」がセットになった新プランだ。
「Rakuten最強U-NEXT」の料金は月額4,378円だが、スタートキャンペーンとして、2026年1月末まで「Rakuten 最強プラン」と同額の月額3,278円で利用することができる。
楽天最強プランとは

そもそも「楽天最強プラン」とは何なのかについて簡単に説明をしよう。
楽天最強プランは、楽天モバイルが提供する唯一(だった)料金プラン。他キャリアのように複雑で多くの料金プランを提供するのはなく、シンプルかつ分かりやすい料金体系にすることで差別化を図ってきた。

データ通信量に対する段階性の料金プランとなっており、他社よりも料金設定が安い。20GBプランでも2,178円と安価である点に加えて、特筆するべきは無制限プランでも3,278円しかかからない点である。
楽天最強プランの料金体系
- 3GBまで:1,078円(税込)
- 20GBまで:2,178円(税込)
- 20GB以上(無制限):3,278円(税込)
楽天最強プランのメリット

楽天最強プランのメリットとしては、繰り返しになるがシンプルな料金体系、そしてどんなにデータ通信をしても月額3,278円しかかからない料金の安さがあげられる。
更に、通話アプリ「Rakuten Link」を使えば国内通話無料。更に契約事務手数料や解約金といった地味にかかる費用が一切ない点も非常に優秀だ。
加えて、楽天モバイル利用者は、楽天市場で買い物をする際にポイントが常時+4%つくので、楽天ユーザーにとってはメリットが大きい。
楽天最強プランのメリット
- 料金体系がシンプルで安い
- データをどれだけ使っても最大3,278円
- アプリ利用で国内通話無料
- 手数料が一切かからない
- 楽天市場でポイントが+4%
楽天最強プランのデメリット

一方でもちろんデメリットもある。最大にして唯一のデメリットはやはり他社と比較して通信品質が悪い点だろう。
楽天はドコモ、au、ソフトバンクの三大キャリアに比べて後発の企業なので、どうしても基地局が少なく、自社回線をカバーできる範囲が狭い点や、通信速度の定価がネックになる。
実際、2024年12月にMMD研究所が大手4キャリアを契約している2,000人を対象に実施した調査結果によると、楽天モバイルの満足度が他社と比べて圧倒的に低いのがわかる。

特に利用者の多い都市部、建物内、地下、基地局が整備されていない地方では通信速度の遅さに悩まされるケースも多いだろう。
逆に言えばデメリットはこの「通信回線の品質」だけなんだけど、このデメリットが楽天モバイルが敬遠される理由といってもいいだろう。
楽天最強プランのデメリット
- 通信エリアが他社より狭い
- 地方や山間部ではつながりにくい
- 都市部でも人口密集地では不安定
- 建物内や地下でつながりにくいことがある
U-NEXTとは

一方で今回楽天モバイルとタッグを組む「U-NEXT」についてもざっくりと紹介をしよう。
U-NEXTは「月額2,189円」の動画配信サービスで、スマホやパソコン、スマートテレビを介して、映画やドラマ、アニメ、ライブ中継など30万以上のコンテンツを配信している。いわゆるVOD(ビデオオンデマンド)サービスだ。

VODの良い点は、テレビと違って、好きな時に好きなコンテンツを好きなだけ楽しむことができる点だ。
テレビの場合は、好きな番組を見ようと思ったら、その時間に画面の前に待機をしているか、録画をして後で見るという2つの選択肢しかとれないが、VODの場合は時間や場所に縛られる事なく自由にコンテンツを視聴できるのが最大の強みだ。

試しに「U-NEXTで話題になっている作品」を見てみるとこんな感じ。最新作品に加えて昔話題になったドラマやアニメ、映画がも視聴できる。
楽天モバイルの狙い

さて、「楽天最強プラン」と「U-NEXT」について紹介をしてきたが、ここで1つ疑問が残る。
楽天モバイルのメリットだったワンプラン、つまり「楽天最強プラン」という唯一の料金体系を崩してまで、「Rakuten最強U-NEXT」を投入した理由はいったい何なのか。
それは楽天が抱える切実な課題が関係している。
楽天モバイル事業は大赤字

楽天グループというと、銀行やクレジットカード事業、楽天市場などを展開する日本の一大企業だが、実はあんまり経営状況が良くない。

楽天モバイルが第4のキャリアとして参入した2019年以降、基地局整備費用などの莫大な投資が必要となり、グループ全体で見ても毎年赤字の状態。
近年は改善されつつあるが、2022年は通期で3,700億円の赤字。そしてその赤字の原因を占めるのが通信事業。つまり楽天モバイルだ。

上の図は総務省がまとめた各通信キャリアの営業利益の推移である。ドコモ、au、ソフトバンクの3大キャリアが大きな利益を上げているに対して、楽天モバイルだけが毎年大きな赤字を垂れ流している。
楽天モバイル | 営業利益額 | 累計赤字額 |
---|---|---|
2020年 | - 2149億円 | - 2149億円 |
2021年 | - 4038億円 | - 6187億円 |
2022年 | - 4593億円 | - 1兆780億円 |
2023年 | - 3225億円 | - 1兆4005億円 |
2024年 | - 2427億円 | - 1兆6432億円 |
2020年~2024年までの5年間で、赤字の累計は1兆円を超える。楽天はドル箱のフィンテック事業が好調なので何とかなっているが、普通ならあっという間に倒産するレベル。
これは三木谷社長もニッコリ笑顔の奥で目が笑っていられないのも無理はないだろう。
赤字額は改善傾向だが

ただ、楽天モバイル事業に関しては投資期間が終わり、黒字化に向けて順調に利用者が増えているという。各キャリアが回線者数を減らす中、楽天の回線利用者数は右肩上がりで、2025年7月に900万回線に達している。

回線利用者は増え続けているが、良いことばかりではない。何故なら、楽天モバイル事業の黒字化達成の目安は当初800万回線されていたし、三木谷社長もそれを目標にしていた。
しかし、楽天モバイル事業では未だ黒字化を達成していない。その理由は楽天モバイルのウリである低料金プラン。つまり客単価が低いことが原因だった。
楽天モバイルのARPU向上は喫緊の課題

モバイル事業の業界用語「ARPU」は、いわゆる客単価だ。大手3キャリアの「ARPU」はだいたい4,000円前後。これは携帯の端末代は含まない。
ahamoなどの3,000円程度の料金で利用できるサービスがあるにも関わらず、大手キャリアの「ARPU」が高いのは窓口対面販売による営業力の高さのおかげだろう。
一方で楽天モバイルのARPUは2,000円程度。安さをウリにしている楽天モバイルだが、客単価は大手3キャリアの半分程度。これが楽天モバイルの誤算。
いくら回線契約が増えても、比例して基地局や通信環境改善のための費用も増加する。客単価が低いままではジリ貧。つまり楽天モバイルの黒字化のためには「ARPU」の向上は必須課題なんだ。
楽天最強プランを値上げするわけにはいかない

とは言え、じゃあ楽天最強プランを値上げするわけにはいかない。何故なら、料金がワンプランしかないのに、値上げなんかしたらあからさまにわかっちゃうし、楽天モバイルの優位性である「安さ」を失いかねない。
せっかく安さで釣って順調に伸ばしている回線契約を減らしてしまっては本末転倒なんだ。
そこで三木谷社長はひらめいた。別のサービスとセットにすることで付加価値を高めようと。
VODサービスは相性が良い

そこで三木谷社長が取った戦略が「U-NEXT」との協業なんだ。
そもそも、楽天モバイルの「ARPU」の低さの原因は、20GB以下の利用者が多いからだ。
であれば、大量にデータを消費する動画コンテンツを抱き合わせで提供することによって、自然に無制限プランに誘導することができる。
消費者としては割安な料金でVODサービスを楽しめるし、データ通信量が無制限に使える安心感もある。
楽天モバイルとしては値上げはできない。でも客単価をあげなければならない。その相反する矛盾を解決する画期的な秘策が今回の「U-NEXT」との協業だったんだ。
注意点 U-NEXTポイントはもらえない

ただし、この「Rakuten最強U-NEXT」には落とし穴もあるので注意が必要だ。
「Rakuten最強U-NEXT」の料金は月額4,378円。楽天最強プランは3,278円、U-NEXTは2,189円で合計すると5,467円だから、別々に契約するより1,089円お得になるように見える。
しかし、U-NEXTは単体で契約をすると、有料コンテンツに使える1,200円分のU-NEXTポイントが付く。「Rakuten最強U-NEXT」にはこれが付かない。
以前トライアルでU-NEXTに加入したことがあるが、意外と見たいコンテンツがポイントを消費しないと見れないことが多かった。
ポイントを使わないでも見れるコンテンツは多いが、有料VODサービスの割に不便さは多かった。個人的にはネットフリックスの方が安いし面白いからおすすめ。
実は安くなっていない

そう、つまり「Rakuten最強U-NEXT」はあたかも割安でU-NEXTが見れる新プランに見せかけて、ポイント分も加味すると割高になっていると言ってもいいだろう。
1月末まではキャンペーンで安く見れるから、楽天最強プランに加入している人は契約変更をしてU-NEXTがどんなもんなのかを試してみるのはアリだが、以降はさっさと元に戻した方がいいだろう。
楽天としてはARPUをあげるために無制限プラン加入者を増やすだけで成功だったのに、これではせっかく作った新プランの意味がない。
個人的には無制限プランに「ワンコインをプラスだけで動画見放題」ぐらいの価格設定じゃないとわざわざ契約をしようという気にはならない。既存のU-NEXT視聴者もわざわざ楽天モバイルに乗り換えをしようとは思わないだろう。
新MVNO「U-NEXT MOBILE」とは

ちなみに、一緒に発表された「U-NEXT MOBILE」についても紹介をしておこう。
「U-NEXT MOBILE」は「Rakuten最強U-NEXT」と一緒に発表をされたが、楽天とはほとんど関係がなく、回線はドコモ系のMVNOで、20GBのデータ通信(上限100GBまで繰り越し可能)ができる。

月額2,189円のU-NEXTに300円追加するだけで20GBのデータ通信ができると宣伝されているが、それは嘘。実際は3,689円。
1,200円分のU-NEXTポイントを通信料金に充当できるため、実質2,489円で使えるよっていうだけのハナシ。

その理屈が成り立つなら、そもそも月額2,189円のU-NEXTも、1,200ポイント分差し引きして989円で使えるという説明をしなければならない。

結局のところ、U-NEXTユーザーは、1,500円で20GBのデータ通信が使えるよっていう料金プランになるんだけど、それなら1,390円で同じ20GB使えて、更に無料通話もできる「日本通信SIM」の「合理的みんなのプラン」を使って、U-NEXTは今まで通り別に加入すれば良い。
「Rakuten最強U-NEXT」と「U-NEXT MOBILE」
そして、「Rakuten最強U-NEXT」と「U-NEXT MOBILE」を比較したのが次の通り。

大きな違いは「データ通信量」、「月額料金」、「回線」になる。更に「U-NEXT MOBILE」はsSIMにしか対応をしていないので注意が必要。スマホに詳しくない人は物理SIMの方が無難。
本来であればここで「どちらのプランの方がオトクか」的なのを考えるんだけど、そもそもどっちのプランもお得にならないから今回は論外。強いて言うなら「Rakuten最強U-NEXT」の1月末までのスタートキャンペーンにだけ乗っかるのはアリ。それ以外はどちらもオススメしない。
結論①Rakuten最強U-NEXTは全くおすすめしない

というわけで結論になるが、新プラン「Rakuten最強U-NEXT」はまったくオススメできない。
繰り返しになるが、「楽天最強プラン」と「U-NEXT」を別々に契約をした方がポイント分を加味すると安上がりなので、そもそもこの料金設定は意味不明。
楽天モバイルを使っている人は、スタートキャンペーンを使って1月末までお試しで「U-NEXT」を使ってみてもいいが、それ以降は元の最強プランに戻した方が賢明だろう。
結論②U-NEXTユーザーにもおすすめできない

今U-NEXTに加入をしているユーザーにとっても、「Rakuten最強U-NEXT」はおすすめできない。
繰り返しになるが、「楽天最強プラン」と「U-NEXT」を別々に契約をした方が、U-NEXTポイント分を加味すると安上がりになるからだ。
「楽天最強プラン」自体は無制限プランは安いのでおすすめだが、新プラン「Rakuten最強U-NEXT」はまったくオススメできない。
結論③U-NEXT MOBILEも不発

そして同時に発表された「U-NEXT MOBILE」もまったくオススメできない。最初は既存のユーザーにはアリかとも思ったが、ちょっと調べただけでガッカリした。
月額2,189円のU-NEXTに300円追加するだけで20GBのデータ通信ができると宣伝されているが、それは嘘。実際は3,689円。
1,200円分のU-NEXTポイントを通信料金に充当できるため、実質2,489円で使えるよっていうだけのハナシ。
その理屈が成り立つなら、そもそも月額2,189円のU-NEXTも、1,200ポイント分差し引きして989円で使えるという説明をしなければならない。こういう姑息な宣伝をしている限り、ユーザーから選ばれることはないだろう。
結局のところ、U-NEXTユーザーは、1,500円で20GBのデータ通信が使えるよっていう料金プランになるんだけど、それなら1,390円で同じ20GB使えて、更に無料通話もできる「日本通信SIM」の「合理的みんなのプラン」を使って、U-NEXTは今まで通り別に加入すれば良い。
まとめ

といわけで今回は満を持して発表された楽天の新プラン「Rakuten最強U-NEXT」について解説をしてきたが、内容は意味不明なくらいショボいというのが俺の感想。
多くのデータ通信をする動画配信サービスとセットにすることにより、値上げをせず客単価をあげる作戦は良かったが、その内容が全くオトクではない。「楽天最強プラン」と「U-NEXT」を別々で契約した方がむしろ安いという意味不明なセット料金になってしまった。
結局のところオトク感がなければユーザーは手間をかけてまで回線契約を乗り換えることはしない。キャンペーンで一時的に利用者が増えたとしても、そのまま惰性で「U-NEXT」を使い続けてくれるのを楽天は期待しているのかもしれないが、そもそもそういったユーザーは楽天モバイルを選ばない。
大手3キャリアが対面販売でそういった付加価値を営業するのが得意な一方で、店舗が少なく質が悪いイメージを払拭できない楽天モバイルを選ぶユーザーはいない。
なので、多分この「Rakuten最強U-NEXT」は早々に値下げするか、他のVODサービスが追加でみられるようになるか、しばらくしたらサービスが終了するのどれかになると踏んでいる。
楽天モバイルの苦難はまだまだ続くだろう。