ありがたいことに、妊活を始めてから半年くらいで妻が第一子を妊娠し、赤ちゃんの心臓が動いていることも確認出来て、1つの山を越えた。
しかし、赤ん坊を授かると、誰もが間違いなく思う不安がコレだ。
障害を持っていないか心配だ。
勿論我が家でもその不安は妊活当初から付きまとっているところではあるんだけど、現代の日本では「出生前診断」という検査を行うことによって、高い精度で一部の障害児が生まれることを防げる。
とういうわけで、今回はそんな障害児にまつわる課題と、出生前診断について、実際に俺達夫婦が悩み、考え、そして実際に行動した内容をまとめていく。
おことわり

一応最初に断っておくけど、この記事の医学的な内容は、俺が実際に医者や看護師から受けた説明を元に執筆している。
だから、内容が100%正しいという保証はできないし、最新の情報は専門のサイトを参考にしてもらいたい。
この記事ではそういった固い内容ではなく、実体験に基づいて、「出生前検査」ってこんな感じだよっていうのを、わかりやすさ重視で書いていく。(勿論、可能な限り正しい内容で記載する。)
ダウン症だけは防ぎたい

まず最初にそもそも何で出生前診断なんかするんだよっていうハナシなんだけど、親心というか、一般論として、自分の子どもは可能な限り障害を持たずに生まれてきてほしい。これは誰しも思う事だと思う。
だから、先に書いたように出生前診断をして、その確率を極力減らしたい。
しかし、仮に出生前診断を行ったとしても、残念ながら全ての障害や精神疾患を洗い出して見つけることは、現代の医学ではできないらしい。
勿論、なんの障害も持たない人間なんていない。俺だって多分頭がおかしい部類だと思う。
だから、もし赤ちゃんの腕が1本や2本欠損していたとしても、それは受け入れて出産を選択するつもりだった。
しかし、ダウン症、お前だけはだめだ。
ダウン症候群とは

ダウン症っていうと一回は耳にしたことがあると思うんだけど、特徴を簡単に言うと、「発達の遅れ」や「疾患にかかりやすい」、そして目の感覚が広かったりする「特徴的な容姿」だ。
具体的には後述するんだけど、これはいわゆる「染色体の異常」により発生する障害だ。
せっかく望んで授かった第一子だとしても、ダウン症の子がもしも生まれてしまったら、その後の俺と妻の人生は、文字通りその子にささげる事になることが確定してしまう。
倫理観は抜きにして、向こう50年間、俺が死ぬまで毎日ダウン症の我が子を発狂しないで面倒見続けられる自信があるかと言われれば、それは「No」だ。
残念ながら俺はそこまで良く人間ができていない。
ダウン症の子どもが生まれる確率は結構高い

しかも、現実にはダウン症で生まれる子どもは20代で0.1%、35歳で0.3%、40歳で1%以上と、中々確率が高いし、年齢を重ねるごとにより高くなる。
だから、出産を選択するにあたって、「後悔」がないように、そして自分の子どもに「責任」が持てる最低ラインとして、「ダウン症」の出生前診断を行うことにした。
出生前診断とは

ところで、そもそも出生前診断って一体何なんだっていうハナシなんだけど、簡単に言うと、赤ちゃんが障害児でないかどうかを見分ける検査のことだ。
勿論、全ての精神疾患を出生前診断で見つける事はできないし、検査できる期間に限りもあるんだけど、それでも「ダウン症」なんかの比較的重い障害を高い精度で見つけ出すことが可能だ。
出生前診断は、母親の血液に含まれる「胎児や胎盤」由来の成分を分析(スクリーニング検査)する「非確定診断」と、母親の羊水に含まれる胎児の皮膚片などのDNAを分析する「確定診断」に分かれる。
非確定診断

非確定診断は、その手法によっていくつかに分かれるが、有名なのは「クワトロテスト」と、より精度の高い「NIPT(新型出生前診断)」だ。
それなりに検査精度は高いが、「非確定診断」の名前のとおり、判定が「陰性」だったとしても、ごくまれに漏れがある。
また、検査対象は「ダウン症候群」や「エドワーズ症候群」、「パトウ症候群」などのごく一部の染色体異常なので、全ての障害に対して検査ができるわけではない。
血液検査でできるので母体への負担が少ないのが嬉しい。
クアトロテスト

クアトロテストは、従来からある非確定診断の手法の1つで、母親の血液中の成分を調べて、胎児が「ダウン症候群」や「エドワーズ症候群」、「一部の形態異常」であるかどうかがわかる。
比較的安い金額(25,000円程度)で受けることが可能。
NIPT(新型出生前診断)

NIPT(新型出生前診断)は、近年確率された手法で、胎児が「ダウン症候群」や「エドワーズ症候群」、そして「パトウ症候群」であるかどうかを判別することができる。
クアトロテストよりも高い精度を誇るため、こちらが優先されるケースが多くなってきている。
ただし検査費用が非常に高額(180,000円程度)
クアトロテストとNIPTの違い

クワトロテストとNIPTはどちらも母親の血液だけで検査ができるので、母体の負担が少ないのが共通の大きなメリットだ。
主な違いとしては、クアトロテストよりもNIPTの方が「検査精度」が高く、その分「検査費用」が高額になる点だ。
クアトロテストが25,000円程度で受けられるのに対して、NIPTは180,000円程度と非常に高額だ。しかも自費診療なので保険適用はない。
クアトロテストとNIPTの違い
- 検査精度はNIPTの方が高い
- NIPTの検査費用は高額
- 判定できる染色体異常は若干異なる
また、NIPTの検査精度は高いが、それでも100%の精度ではない点には注意したい。(それゆえ、非確定診断と言われる。)
確定診断(羊水検査)

クアトロテストとNIPTが非確定診断なのに対して、100%の精度を誇るのが「羊水検査」だ。
母親の羊水を直接注射で採取して、羊水の中に含まれる胎児の皮膚片などのDNAを直接調べることで、染色体異常があるかどうかを判別するため、必ず検査結果は正しくなる。
ちなみに費用は、俺(妻)が受診した病院だと5万円くらいなんだけど、クリニックによってはピンキリらしい。これも保険適用外で自費診療。
羊水検査は流産のリスクが伴う

じゃあ最初から羊水を調べて確定診断すればいいじゃんって思ったあなたは鋭い。
しかし思い出してほしい、羊水検査をする際には子宮に直接注射針を刺して中の羊水を採取するんだ。
だから、勿論子宮に穴を空けることになる。故に子宮から出血したり、赤ちゃんに誤って針が刺さったりして、流産になるリスクが伴うんだ。
じゃあどれくらいリスクが高くなるんだっていうと、0.1%程度らしいから、正直誤差の範囲らしい。
ただし、確率が高かろうが低かろうが、子宮に針を刺す行為が良いわけないので、羊水検査ができるのは、原則的にはクアトロテストやNIPTを行って「陽性」の判定を受けた場合になる。
NIPT(新型出生前診断)の精度

じゃあ、NIPTで陰性の判定をもらったら、絶対にダウン症の子どもが生まれないのかと言われたら、繰り返しになるがその答えは「No」だ。
ただ、陰性判定された場合の精度は99.9%と言われているから、陰性判定を貰えればほぼダウン症の子どもは生まれてこない。
逆に、仮に「陽性」の判定を受けた場合。これに対する精度は80%程度と言われている。逆に言うと、20%の確率で健常な子どもなので、諦めてはいけない。
なので、羊水検査(確定検査)を受けるのは、陽性判定を受けた場合だけで、この20%の確率を拾っていくことになる。
NIPT(新型出生前診断)の費用

繰り返しにはなるんだけど、NIPTの費用はめっちゃ高くて、俺(妻)が受診した病院だと180,000円くらいかかる。
しかも、そのあと羊水検査までやることになったら、合計20万円~30万円くらいのお金がかかることになる。そして自費診療だから保険適用はない。100%自費負担。
それだけのお金をかけてやる必要がある検査なのかと言われたら非常に悩ましいが、俺達夫婦は高齢出産でやっぱりリスクが高いから、より精度の高いNIPTを選択した。
勿論、費用が安いクアトロテストを受けるという選択肢もあるんだけど、高齢出産になるほど精度が低くなる傾向があるらしい(注:これはネット上の情報なので真偽不明)ので、間違って陽性判定を受けるリスクがある。
そうすると結局羊水を検査して確定診断を受けることになる。羊水検査をすることが問題ない人は、クアトロ検査⇒羊水検査でもいいかもしれない。
NIPT(新型出生前診断)で検査できる障害

繰り返しにはなるんだけど、NIPTで検査できるのはごく一部の染色体異常だけで、全ての障害を事前に察知することはできない。
とは言うのも、母親の血液中に含まれる胎児のDNA情報は断片的、というか本当に物理的に断片的で、赤ちゃんの遺伝子がバラバラになって存在しているから、それをつなぎ合わせて元の染色体がどんなDNAで成り立っていたのかを「推定」するからだ。
イメージとしては、シュレッダーにかけた紙のかけらをつなぎ合わせて、元々の用紙にどんなことが書かれていたのかを確かめる作業がNIPTなんだ。
そして、NIPTは、推定した染色体の異常によって、次の3つを判定することができる。
ダウン症候群(21トリソミー)

ヒトの染色体は全部で23対46本で成り立っている。ダウン症候群はそのうち21番目の染色体が3本になってしまった場合に起こる。

特徴は、「発達の遅れ」や「疾患にかかりやすい」、そして目の感覚が広かったりする「特徴的な容姿」だ。
ダウン症のやっかいなところは、障害はしっかり持っていて、一生介護が必要だけど、寿命は平均60歳程度と、十分に長生きするところだ。
だから、ダウン症の子どもが生まれた場合は、その後の人生は全て、その子どもの介護に捧げることになる。
エドワーズ症候群(18トリソミー)

ダウン症候群は21番目の染色体が3本になってしまった場合に起こったが、エドワーズ症候群は18番目の染色体が3本になってしまった場合に起こる病気だ。
症状としてはダウン症よりも深刻。
寿命もとても短く、ほとんどが生後1週間以内に亡くなり、1年以内の生存確率は10%程度。
パトウ症候群(13トリソミー)

最上級に深刻な染色体異常。13番目の染色体が3本になってしまった場合に起こる病気だ。
トリソミー番号の数値が若い番号に異常が起こると、より障害が重篤化する。

これは、若い番号の染色体の方が、純粋にサイズが「大きい」からだ。
その分たくさんのDNAが重複して存在し、カラダを作るたんぱく質なんかの生成にエラーが生じるためだ。
勿論生存確率も低くて、生後まもなくほとんどが亡くなる。
症状の一番軽いダウン症候群が一番きつい

エドワーズ症候群やパトウ症候群の場合は、万が一生まれてきてしまっても、そのほとんどは生後間もなく、長くても1年以内には亡くなるから、親の務めとして1年間全力で面倒を見ることができる。
しかし、ダウン症候群が障害としては一番軽度であるが故に、下手をしたら自分たちより長く生きる可能性がある。
出生前診断は命の選別

敢えて言う必要もない、わかり切ったことだけど、出生前診断は「命の選別」以外の何物でもない。
自分が面倒見れるかどうかという「エゴ」で、堕ろすか産むかを決めるのだから、まるで神にでもなったような気分だ。意外に神様も責任が重い。
このあたりは実際に夫婦で良く話す必要はあると思うんだけど、俺達夫婦の結論としては、NIPT、そして羊水検査で陽性が出てしまったら、堕胎させることに決めた上でNIPTを申し込んだ。
ちなみに、NIPTを申し込むと最初に看護師や医者との面談があるんだけど、今回書いた内容みたいなのを1時間くらいかけて話される。勿論申し込んだ後に「やっぱり検査やめる」っていうのもあり。
もし、NIPTを始めたとした出生前診断を本当にやるのであれば、どのラインで堕胎させるのかっていうのは、事前に決めて置いた方がいいし、夫婦間で十分に話し合いが必要だ。
実際にNIPT(新型出生前診断)を申し込んでみた

最後に、実際にNIPTを申し込んでみた結果を書いて終わりたい。
通常、NIPTを受けることができるのは、妊娠10週目~16週目の間。今回は12週目に受けた。
受診しているクリニックでは残念ながらクワトロテストまでしかできなかったので、検診の際に相談したら、大学病院と連携してくれて、その場でNIPTの予約をしてくれたのはとても良かった。
大学病院では、看護師からのNIPTの説明とカウンセリングを1時間くらい、そして医師との面談を経て、検査に同意すれば採血を行う。
検査結果を聞けるのは採血から2週間後。
NIPT(新型出生前診断)の検査結果

検査結果を聞くのはドキドキだったが、ありがたいことに判定はダウン症候群、エドワーズ症候群、パトウ症候群のいずれも「陰性」だった。
ただ、確定診断ではないから、0.1%の壁を越えてダウン症の子どもが生まれる可能性はある。
もし、そうなった時に、俺はその義務や責任を全うすることができるのか。
そうでなかったとしても、別の障害を抱えた子どもが生まれた時に、その時俺はどう思うのか。
その時になってみないとわからない。俺はちゃんと親になることができるのか、今はめっちゃ不安だ。
出生前検査は保険適用にしてもいいと思う

今回実際に出生前検査を受けて思ったことが、やはり費用が非常に高額で、誰でも受けられる検査ではないということだ。
しかし、費用を惜しんだばかりにダウン症を持った子どもが生まれてしまったら、両親の人生はその子に捧げることになるから生産性が下がるし、多額の税金が投入されることになる。
故に現在、出生前検査は全額自費負担だが、せめて3割の保険適用が効くようにしたり、全額を国が補助して、全員が必ず出生前検査を受ける制度にしてもいいと思う。(陽性結果に対する選択の余地は残してもいいと思う。)
まとめ

今回は妊娠をめぐる様々な課題の中でも、結構ナーバスな話題を取り上げた。
幸い、俺は妻に付き添うことができる時間がある方だから、こうやって医者から説明を聞いて「自分事」としてとらえることができたんだけど、世の中の働くお父さんは、将来の子どもの為にお金を稼がなきゃいけないから、時間を割けない人もいると思う。
だから、少しでもこの記事が「出生前診断」について知るきっかけになったら嬉しい。
加えて、出生前診断には多額の費用がかかるのも事実で、誰でもできるわけではないと思う。
出生前診断は必ずやらなきゃいけないものではないと思うし、やらないに越したことはないんだけど、もしやるのであれば、検査結果がどうなったら堕胎させるのかっていうことを、是非夫婦で良く話し合ってもらいたい。