米の価格上昇、ニンテンドースイッチ2の発売。
世間から嫌われる行為の中でも、かなり上位に食い込むと思われる経済活動が「転売」だ。
しかし、そんな四面楚歌、誰も賛同してくれるはずのないこの転売という行為について、トーマスガジェマガという禿げたおっさんが異議を唱えたとある動画が、3年前に話題となった。
この動画が出た当時は、俺も「なるほどね、確かにそうだわ」とは思ったんだけど、何となく胸の奥がモヤモヤするようなわだかまりを感じていたんだ。
今回は、トーマスガジェマガが投稿した伝説の動画「転売家が悪ではない理由」の内容を深堀しつつ、3年経った現在でも、果たして「転売家は本当に悪ではないのか」ということについて考察をしていきたいと思う。
転売家が悪くない理由

まず、トーマスが動画の中で言及している、転売家が悪くない理由についてまとめると次の通りだ。
- 転売ヤーに品薄を作りだす力はない
- 転売ヤーは供給を止めない
- 転売ヤーがいてもいなくても品薄商品の市場価格は高騰する
- 悲しんだ人の数だけ幸せになる人もいる
今回はこれらについて1つずつ検証し、本当に転売は悪くないという結論になるのかを考察していく。
転売ヤーに品薄を作りだす力はない

まず転売屋が悪くない理由の1つ目が「転売ヤーに品薄を作りだす力はない」ということだ。
そもそも転売ヤーに品薄を作り出す力なんてないですよ、転売ヤーがいるから品薄になっているわけではないんですよっていう話になるんだけど、この理論は正しい。
なぜなら、転売ヤーに品薄を作り出せる力があるのであればどんな商品でも転売ヤーによって価格を吊り上げることができるよねっていう話になる。
しかし、実際はそうではない。転売行為が横行するのはそもそも品薄の商品または品薄になることが想定される商品に対してだけだから、転売ヤーにはそもそも品薄を作り出す力はない。
ただし注意したいのが、転売ヤーは品薄に拍車をかけることができる。
そういう意味では転売ヤーに品薄を作りだす力がないっていうのは半分正しくて半分間違いだとともいえるだろう。
転売ヤーは供給を止めない

そして転売が悪ではない理由の2番目が、転売ヤーは供給を止めなということだ。
転売ヤーは何よりも在庫リスクを恐れる。それゆえに、買い占めを行ってもそれをすぐにメルカリなどで販売をする。つまり供給を止めているわけではないですよっていう話なんだけど、この意見も正しい。
そしてこの意見を根拠として次の主張が展開される。
転売ヤーがいてもいなくても品薄商品の市場価格は高騰する

つまり、転売ヤーがいようがいなかろうが、供給量が変わらないのだから、商品の価格は市場原理に基づき、品薄であれば勝手に価格が上がってくというのが、転売が悪ではないという根拠になってくる。
この主張も正しいんだけど、誤認する可能性が非常に高いので注意が必要だ。
確かに、転売ヤーは供給量には関与しない。
しかし、需要量には大きく関与する。

例えば、100人が1台ずつニンテンドースイッチを購入することができたら、販売台数は100台で足りる。
なので価格は上昇しない。なぜなら需要と供給が一致しているからだ。
しかし、ここに転売屋が介入するとどうなるだろう。

転売屋10人が10台ずつ、最初にニンテンドースイッチを買っていってしまったらどうなるか?
もちろんニンテンドースイッチは不足する。
実際に欲しい人数は100人で一緒、変わらない。
しかし、必要な量つまり需要量については最初の10人が10台ずつ合計100台買っていった分と、残りの買えなかった90人を合わせて190台になるんだ。
つまり、供給量100台に対して需要量は190台になり、需要が供給を上回る。そしてニンテンドースイッチの価格高騰につながる。
これが転売屋が儲かるカラクリなんだ。
つまり転売ヤーがいてもいなくても市場価格は高騰するというのは確かに正しい。
何故なら、転売ヤーが介入する商品はもともと品薄であるから、いてもいなくても価格が高騰するっていうのはその通り。
しかし、転売ヤーがいることで、高騰した価格が更に吊り上がるっていうのもまた事実だ。
なぜなら転売屋が購入した分、需要が確実に増加しているからだ。
悲しんだ人の数だけ幸せになる人もいる

ただ、トーマスはそんなこと百も承知だろう。
仮に転売屋が需要に影響を与えているとしても、それは悪いことではない。なぜなら転売屋の存在によって、メリットを享受している勢力がいるからだ。
具体的に言うと、そんな人気商品ニンテンドースイッチを、発売日に店頭にわざわざ並ぶことなく、転売ヤーから実際にニンテンドースイッチを購入してる者たちだ。

これはウーバーイーツみたいなサービスを想像するとわかりやすい。
商品価格に手間賃をプラスすることによって、自宅から一歩も出ることなく人気商品を手に入れるサービスがあること自体は、確かに悪とは言い切れない。
ゆえに、転売屋の存在によって、確かに定価で購入することができなかった層がいる一方で、その数だけ幸せになった人がいるということは間違いないことだろう。

ただし、この主張にも1つ大きな落とし穴がある。
それが、あくまでこの意見は金持ち側の理屈でしかないということなんだ。
つまり転売行為を別の側面で観てみると、これは金持ちが転売ヤーを雇って、人気の商品を買ってこさせているともいえるんだ。
資本主義社会だから

だから、この転売が悪なのか悪でないのかっていう話において、「だって資本主義社会だから、しょうがないじゃん」っていう風に言われてしまったら「あ、うん、そうだね。転売は、悪くないよね。だって資本主義社会だからね。」としか言えない。
トーマスの動画を見てなんだか心がモヤモヤする感じの正体って、たぶんここにあるのよね。

資本主義社会だから、しょうがないか。そうだよね。で割り切れればそれでいいし、じゃあ俺も金持ちになろうっていうのも悪くない。
でも、やっぱりそれってお金持ちの側だけの理屈ですよね?っていう話。
パンが食えないならケーキを食えばいいじゃないとっていうのと一緒。
米が食えないならパンを食えばいいじゃないと一緒。
俺たちは、パンが食いたいわけじゃない、米が食いたいんだ。

でも、資本主義社会を生きる俺たちの大半はお金持ちじゃない。
そんな庶民の我々は、金持ちがまずニンテンドースイッチを楽しんだ後でしか、楽しめないのであれば、それはヘイトが溜まるのも無理もないよね。
だからこの「悲しんだ分だけ幸せになって人もいる」だからトントンだよねっていう考え方は、意見としてはわかるんだけど、非常に危うい側面を持っているから、注意をしたい。
「転売屋が悪ではない」は正しい

というわけで、トーマスが主張している「転売屋が悪ではない」という主張は正しい。少なくとも資本主義経済の原理では正しい。
ただ、じゃあ、転売は悪ではないよねっていう話で終わってしまったら、ちょっとつまらないよね。
というわけで、ここからもう一歩踏み込んだところまで考察をしていきたい。
それが、「転売が悪である理由」だ。
転売が悪である理由

というわけでここからは打って変わって「転売が悪である理由」を俺個人の意見として解説していく。
「転売が悪である理由」は次の通りだ。
- 転売の横行で価格が吊り上がる
- 転売の横行は治安を悪くする
- 転売の横行は社会的弱者を虐げる
転売の横行で価格が吊り上がる

繰り返しになるが、転売屋の介入によって供給量は変化しないが、その一方で需要量は増加する。
もともと品薄の商品に対して、転売屋が付け込むことによって、更に市場価格は上昇するが、それは見せかけの需要、つまり投機的な取引を加味した価格なので、少しすれば本来の市場価格に落ち着いてくる
つまり、転売屋が介入することで価格が吊り上がることは間違いなく、その吊り上がった瞬間を狙って転売屋は儲けをとるんだ。
つまり、転売屋の行っていることは投機以外の何物でもない。
投機自体が悪いことではないが、ギャンブルをしたいわけではない一般庶民がそれに巻き込まれてしまうっていうのは、褒められたことではないだろう。
転売の横行は治安を悪くする

そして2番目に転売が悪である理由は、転売の横行は治安を悪化させる。
これは、何となく肌感覚でわかると思うんだけど、例えば、メルカリでニンテンドースイッチ2が詐欺まがいの出品が増えている。
例えば、コメの価格高騰に付け込んで、詐欺サイトが増えている。
もっというと、農家の倉庫から、コメの窃盗被害が相次いでいる。
そう、つまり実体からかけはなれた価格高騰は治安の悪化を招くんだ。
転売ヤーは治安の悪化に加担してしまっているし、転売ヤーから商品を買ってしまった人も、また同じだと言わざるを得ないだろう。
転売の横行は社会的弱者を虐げる

そして3番目に転売が悪である理由は、転売の横行は社会的弱者を虐げる行為につながることだ。
繰り返しにはなるんだけど、転売を悪ではないと認めてしまう最大の理由が、だって世の中資本主義社会だから仕方ないよねっていう考え方に基づいているんだけど、これを100%真に受けてしまうのは、非常に危険だ。
とはいうのも、この意見を真に受けてしまうと、例えば、生活保護を受給している人とか、障害者みたいな社会的弱者の人たちに対して、非常に攻撃的になってしまうんだ。
だって、お金を持っていない、働いていないあなたがいけないんでしょ?悔しかったら努力をしてもっとお金を稼いでみれば?みたいな感じ。
もっと言うと、資本主義社会だから、社会保険なんていらないよね、税金なんてかけないで、もっと経済を回してみんなが儲かればいいよね。お金がない人はしっかり働いていないから自己責任だよねっていうこと。
つまりこの「資本主義社会だからねしょうがないよね」っていう考え方は、貧富の差を拡大させることにつながるんだ。
これが、転売が悪である理由だ。
転売行為を規制することはできない

というわけで、そんな「悪行」である転売行為だが、それを規制する法律は、チケット転売以外には存在しない。たぶん。
故に、チケット以外の転売行為をしても法律違反にはならない。
なぜなら、転売行為はただの経済活動の一環に過ぎないからだ。
資本主義社会において、経済活動はその根幹をなすところであるから、もちろんそれを規制することなんてできない。
そんなことをしてしまえば、資本主義社会という枠組みが崩壊してしまう。故に転売を規制することはできないんだ。
まとめ

というわけで最後にまとめになる。
繰り返しにはなるんだけど、「転売家は悪ではない」という意見、これは正しいし、「転売が悪である」という意見、これも正しい。
この矛盾した2つの主張のどちらも正しいと言えるのは、単純に主張する立場によって、答えは変わってくるよっていうだけの話なんだ。
世の中は全て白と黒だけではっきりさせることができることばかりではない。
立場が違えば、主義主張も当然変わってくるんだ。
つまりYouTuberの言うことを鵜呑みにしないで、その主張をしっかりと自分の中に落とし込んで自分の意見を持つことが大事だよっていう話、というオチで締めくくりたいと思う。
最後まで見てくれて感謝。